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 MURDEROUS PLOT

MURDEROUS PLOT

捕まえられるものならば。【子津夢】

捕まえられるものなら捕まえてご覧?

花嫁が投げるブーケを手にした人は、幸せになれるらしい。

道を歩いていると、沢山の人に出会う。笑っている人、怒っている人。中には泣いている人も居る。
そんな人達との出会いも、きっと大切なんだろうと思う。
前世からの巡りあわせかもしれないし。一度きりの擦れ違いかもしれないし。
だから私は、道を歩くことが好きだ。

ある夕、私はいつもの散歩道を歩いていた。
土手沿いの小さな畦道は、この時間帯は犬の散歩で通るご老人や、若者がよく使うため、人間観察にはもってこいなのだ。
すると、ジョギングなのだろうか、額に汗をかきながら一生懸命前を見据えて走る少年を見かけた。
額にはヘアバンが巻かれている。肩から下げているタオルが、小刻みに揺れる。
するり、とそのタオルが彼の肩から離れた。そして、ふわふわと一時だけ宙を浮く。
すぐにそれは重力に則って、土の上へ落ちた。ご丁寧に、私の足元に。
――この人と私は、もしかしたら前世からの何かしらの運命があるのかもしれない。
そう思い、慌てて目の前のタオルを拾う。そして、彼に手渡した。
「はい、これ。」
「あ、どうもっす。」
ありがとうございます、と付け加え、彼はそのタオルに付いた泥を払い除け、また肩にぶら下げる。そしてまた走り出す。
私の横を通り過ぎて、彼はまたさっきと同じように一生懸命前を見据えて走り出した。
微かに触れたあの人の手は、とてもゴツゴツしていた。そして熱を帯びていた。
「また此処に来るかなぁ。」
何に言うでもなく、そう呟いた。

それから数日経って、私はまた同じ場所を歩いていた。
野良犬が、さっきからずっと私について来る。それはまぁどうでも良いか。
私は、さしてそのことを気にも留めず、前を見据えて歩き続ける。威風堂々というスタイルが好きだ。格好良いと思う。
暫く歩き続けて、犬も追ってこなくなってきた時、小さな花畑を見つけた。これは新しい発見だった。
「綺麗だなぁ…。」
そっと腰を下ろし、花に触れてみる。黄色い。チアリーディング等で使う「ボンボン」のような花びらが、愛くるしい。
それを家に持ち帰ることに決めた私は、ぴんと伸びたものを手の中に収めていく。

どれだけの時間を、そこで過ごしただろう。カラスの鳴き声ではっと目を覚ました私の手には、溢れんばかりの「ボンボン」が。
「いけない、帰らなくちゃ。」
踵を返し、私はもと来た道を引き返す。もう、ご飯の時間だ。
途中で、誰か人にぶつかってしまった。でも、謝るほどの余裕も無くて、私はまっすぐと進み続ける。
ふわりと、何本か花を落としてしまったことにも気づかず、私は家への道の地図を頭に思い浮かべていたのであった。

「…。あ、昨日の人っす。」
これ、忘れ物かなぁ、という小さな小さな男の人の呟きが、私に聞こえるはずもなくて。
その人が、私の落とした花を持ち帰り、仕方なしに育ててくれるなんてこと、気づけるはずも無くて。


この前の出会いが、本当に運命だったのだと気づけるはずも、無くて。



花嫁が投げたブーケを手にした人の人生は――…??

         それは、神のみぞ知る―――。


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製作時間は50分位。



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